トム・モーガンのフェイバリット・フライズ、フェイバリット・ウォーターズ
この「本」ができるまで

 2008年初頭に私は、トムの豊かな釣りの経験を活かして、なにか本を作れないか,相談を始めました。私の本作りに対する情熱と、トムの広範な知識を組み合わせた作品です。ロッドメイキングは私たちの時間のうち相当な部分を費やしているのですが、このプロジェクトは取り組む価値があると思いました。ボーズマンのアーティスツ・ギャラリーで、2009年11月に展示する作品として、作ることになったのです。

 1冊の本をデザインするという作業には、必ず変化が伴います。多くのアイディアを試して捨てた後、やっと調和が生まれてくるのです。ギターのチューニングにも似ているかも知れません。そして、すべてのチューニングが終わったとき、本は自ら歌いはじめるのです。

 私は、小さな本を作るのが好きです。読者を驚かすような、ユニークなバインディング技術も使ってみたいと思います。小さな本ですから、トムが書くストーリーも締まったものである必要がありました。


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 当初、私たちはフライを本に埋め込もうと思っていたのですが、かさばるものがあるため、諦めました。そこで、本のケースにフライをマウントすることにしたのです。素材はすべて、長期保存に堪える高品質なものにしようと決めていました。ニューヨークのレギオン・ペーパー社のマイケル・アンブローシオの助言で、私はイタリア製の美しいコットン・ラグペーパーを入手することができました。装丁に使った布もイタリア製です。川の写真を入れ込むために、紙を楕円に切り抜く型を私たちは地元の印刷業者に発注しようと思いました。しかし、入手したイタリア製の紙に直接印刷すると、水彩のソフトさをもった美しい画像になることがわかったので、その手間は省くことができました。エンボス用の型も私個人のコレクションからぴったりなものを発見できましたので、写真のまわりをそれで囲むことができます。印刷はエプソンR1800、レイアウトソフトはアドビの InDesign CS3を使用しています。


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 この本用としてトムが選んだフライは、実際に彼が好んで使ったパターンです。そのパターンにまつわるどの話を披露しようか、楽しい悩みがあったようでしたが、これは予想しない副産物でした。採用されたストーリーの多くは、トムの体験もしくは彼が考え出したテクニックを取り上げています。最初、彼はトラウト用フライのみを選びだそうと思っていましたが、人生においてスティールヘッド・フィッシングは大きな位置を占めていましたので、それも盛り込むことにしました。1つのテーマにつき800語でストーリーを語るのは難しいことでしたが、彼はこの本に適用する「声」を見つけ、それを磨いていったのです。ストーリーを読んでアドバイスを提供してくれたのはサンディ・ピッテンドリー、編集を担当したのは大学で英文学名誉教授を勤めるアーサー・コフィンです。

 採用されたフライは、3つに大別されます。スティールヘッド・フライ、ウエットフライ、ドライフライです。ドライフライは、マッチング・ザ・ハッチのパターンとアトラクター・パターンに分けられます。ウエットフライは、トム独自の「モーガン・トゥイッチ」で威力を発揮するもの。「スパース・コメット」というスティールヘッド・フライは彼のオリジナル、「ボマー」は彼の釣りのキャリアの最終盤を飾ったフライでした。

 トムのためにフライを巻いてくれたのは、各分野の達人であるレネ・ハロップ、クレイグ・マシューズ、そしてマシュー・ドーク。レネが担当したのはレネゲイド、ジンジャークイル、エルクヘア・カディス、ロイヤルウルフ、ブルーダン、アダムズ、そしてグーファスバグ。クレイグはアルズ・イエローホッパー、スパース・コメット、ホワイト・マラブーマドラー、そしてガードルバグ。マシューはボマーを巻いてくれました。今ではあまり目にしなくなったパターンも多いのですが、皆様にご紹介できて嬉しいです。


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 トムによるフライの選定が終わった段階で、私たちはこう考えました。フライの歴史も入れたいね。古書およびタックルのディーラーとして有名なジム・アダムズは、各パターンの歴史に関する資料を提供してくれました。それにより、本にさらなる深みが出たと思います。

 ボックスのふたに飾られたコインは、中に特別なものが入っているということを示します。下絵は私が描こうと思いましたが、すこしやってみて、やはりプロの手が必要であることがわかりました。リビングストン在住のロバート・スパンリングはひざまずく釣り人の姿を描いてくれましたが、これはストーキングが上手だったトムのことです。コインの鋳造を担当したのは、ロッドチューブのキャップに埋め込む銀貨を作ってくれているワシントン州のNWテリトリアル・ミント社です


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 さて、次はボックスをデザインする段階ですが、これも美しくあらねばなりません。第1の案は、フライと本のスペースを中で区切った真四角のものでしたが、フライをきちんと保護し、かつ本を取り出しやすいデザインが欲しかったので、これはボツにしました。そこで考えたのが「サーペンティン型」に開くデザインですが、これはボックスの製造を担当してくれるボブ・ジャクソンにとっては難題となりました。しかし、その結果生まれた製品は、フライが見やすく、かつ保護され、さらに本も取り出しやすくなっています。

 フライの設置については、いくつかの方法を試しました。作品を額装して販売している複数の著名タイヤーに話を聞きましたが、世界各地に発送することになるこの「本」用として、ペグの上に接着剤でフライを止める方法は耐久性に疑問が残りました。そこでトムが考えたのが、マグネットの活用です。私としては、クラシックな感じがないと思ったのですが、実際に試してみると、驚くほど調子が良い。マグネット棒は暗い色にメッキしてありますので、トムが求める機能と、私が求めるエレガンスの両方を満たしています。また、フライ好きな人にとっては、実際に手にとって眺めることもできますので、さらに楽しい仕掛けと言えるでしょう。

 ブックメイキングと釣りという2人の情熱を、皆様に作品の形で見て頂くことができ、たいへん嬉しく思います。

ジェリー・カールソン

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